[「阿蘇外輪」トップページ] - [序文] - [早春] - [] - [] - [] - []


序文 - 「阿蘇外輪」を巡って

写真家 前田 晃

 江崎幹秀さんが、共通の友人に連れられて青山の事務所に来られたのは、3年ほど前のことだったでしょうか。はじめてお会いした江崎さんは、その眼差しに"肥後もっこす"の気骨を感じさせる一方、人なつこい笑顔に何ともいえない柔和な人柄が滲み出ているひとでした。話が弾んで、ぜひ熊本に撮影に来て下さいと誘われました。九州は仲々行けないなと思いながら半分社交辞令で、そのうちぜひと答えたものです。

 それが、思いのほか早く実現しました。父・前田真三の写真展を熊本で開催する計画が急に持ち上がり、その打ち合わせも兼ねて、撮影に出かけることになりました。2000(平成12)年の6月のことです。打ち合わせを無事終えて、3日間ほど、江崎さんの案内で、初夏の阿蘇周辺を回りました。そしてその年の11月、写真展の開催に合わせて、1週間ほど熊本に滞在した折りも、何日間か一緒に阿蘇外輪も含めて、あちこちを巡ることができました。実はこの間、10月にも一度共通の友人とともに東北に旅行しています。

 私自身の撮影は単独行が多く、半年の間に3度も同じ人と一緒に出かけることは、はじめてのことです。ともにカメラを並べていても、10年来の知己のように違和感が無く、時には冗談を言い合いながらの撮影も楽しいものでした。江崎さんと私の撮影スタイルが似ているから、まったく違和感を覚えなかったのでしょう。そのスタイルとは、ひとことで言えば「自然体」です。父はよく「風景写真は、気負わず、倣わず、自然体で撮る」と言っていましたが、私もそのことを常に心がけています。そして江崎さんも、おそらくそうなのではないかと思っています。

 自然体で捉えた江崎さんの写真は、その人柄を映しておおむね優しく、時には真摯な眼差しが、ぴりっとした味付けを添えています。そして本書『阿蘇外輪』です。今までは、どちらかといえば脇役であった阿蘇外輪という地域に目を向け、実に丁寧にそれらと対峙していることが、一枚一枚の写真から伝わってきます。と同時に、阿蘇外輪のさまざまな風物を一たん心に納め、それを心のフィルターを通して描くことこそ「江崎流の自然体」なのだと改めて感じています。


[「阿蘇外輪」トップページ] - [序文] - [早春] - [] - [] - [] - []